前回から引続き平成26年度税制改正大綱についてご紹介します。今回は税制改正大綱後半の「追加して決定する事項・法人課税」についてです。
法人課税
復興特別法人税廃止の前倒し
「経済の好循環を早期に実現する観点から,経済政策パッケージに盛り込まれた所得拡大促進税制の拡充や政労使会議での取組とともに、足元の企業収益を賃金の上昇につなげていくきっかけとするため、復興特別法人税を1年前倒しで廃止する。(平成25年12月12日与党税制改正大綱より)
とされました。閣議決定された平成26年度税制改正の大綱でもこの方針が踏襲されました。復興特別法人税の前倒し廃止については、言わば復興特別法人税を財源に賃金補償を行うと言う事で批判もありました。
これは産業界から要望されていた法人税の実効税率引下げの議論を税制改正大綱で見送る代わりに、復興特別法人税の廃止を前倒しして実質的に実効税率引下げを行い、見返りに賃金上昇・景気回復の好循環のストーリーを作りたい、消費税増税のエクスキューズを作りたい、という思惑があるとも言われています。
交際費等の損金不算入制度の見直し
交際費の損金不算入制度につき
交際費等の額のうち、飲食のために支出する費用の額の50%を損金の額に算入することとする。(平成26年度税制改正の大綱P70より)
とされました。
過去の記事でご紹介した通り大企業の交際費は原則損金不算入でしたが、飲食のために支出する費用については50%を損金算入可能となる見込みです。
また中小企業については
中小法人に係る損金算入の特例について、上記①(飲食費50%損金算入)との選択適用とした上、その適用期限を2年延長する。 (平成26年度税制改正の大綱P70より)
とされました。
これも過去の記事でご紹介した通り中小企業の交際費損金算入限度額は800万円ですが、この800万と飲食費50%損金算入との選択適用となる見込みです。
留意点としては対象となるのが飲食のために支出する費用と言う事です。過去の記事でご紹介した通り、
交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(租税特例措置法61条の4第3項より)
であり、そのうちの
飲食その他これに類する行為のために要する費用(専ら当該法人の法人税法第二条第十五号 に規定する役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。)(租税特例措置法61条の4第3項2号より)
の50%が損金算入可能となりますがその他の交際費は従前どおり損金算入が制限されます。またこの措置は2年間(平成28年3月31日までに開始する事業年度まで)とされています。
地方法人課税の偏在是正
- 法人住民税法人税割の税率の改正
- 地方法人税(国税)(仮称)の創設
が行われる見込みとなりました(平成26年度税制改正の大綱P73より)。
法人住民税法人税割の税率の改正
法人住民税法人税割の税率を次のとおりとし、平成 26 年 10 月 1 日以後に開始する事業年度から適用する。
とされました。
現行 | 改正案 | |||
---|---|---|---|---|
[制限税率] | [標準税率] | [制限税率] | [標準税率] | |
道府県民税法人税割 | 5.0% | 6.0% | 3.2% | 4.2% |
市町村民税法人税割 | 12.3% | 14.7% | 9.7% | 12.1% |
地方法人税(国税)(仮称)の創設
都道府県民税・市町村民税の税率引下げに伴い地方法人税(国税)が創設される見通しです。課税標準は法人税額で税率は4.4%となる予定です(平成26年度税制改正の大綱P73より)
これらの改正の趣旨は地方自治体間の税収格差が消費税率引き上げによってさらに広がる事から地方法人税(国税)を自治体に再配分し格差を是正する事にあると言われています。地域間での税源格差解消が目的であるため納税者の負担額に変更はありません。
会社法改正案に伴う改正
会社法の改正にともない、関連する改正が予定されています。
反対株主買取請求権による端数株の取り扱い
改正会社法において、株式併合時の反対株主に対して、端数株式の発行会社への買取請求権が認められる見込みです。これに併せて
みなし配当の額が生ずる事由となる自己の株式の取得について、その範囲から株式の併合に反対する株主からのその併合により端数となる株式の買取請求に基づく取得を除く(平成26年度税制改正の大綱P51,89より)
こととされる見通しです。
監査等委員会設置会社の利益連動給与
改正会社法で予定されている監査等委員会設置会社は報酬委員会がありません。よって
監査等委員会設置会社においては、取締役会の決議において監査委員の過半数がその決議に賛成していることとする(平成26年度税制改正の大綱P89より)
とされれる見通しです。
使用人兼務役員になれない人の範囲
使用人兼務役員とされない役員の範囲に監査等委員会の委員である取締役を加える(平成26年度税制改正の大綱P89より)。
とされる見通しです。
国家戦略特別区域法に伴う改正
国家戦略特別区域法の成立に併せ以下の制度が「国家戦略特別区域において機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除制度等」が創設される見通しです。
これは
機械装置、開発研究用器具備品、建物及びその附属設備並びに構築物で、(中略)その取得価額の 50%(建物及びその附属設備並びに構築物については、25%)の特別償却とその取得価額の15%(建物及びその附属設備並びに構築物については、8%)の税額控除との選択適用ができることとする(平成26年度税制改正の大綱P71より)。
という制度です。
また総合特別区域法に基づく国際戦略総合特別区に認められている以下の課税の特例が延長される見通しです(平成26年度税制改正の大綱P83,84より)
- 特別償却又は法人税額の特別控除制度の適用期限を2年延長(特措法42条の11)
- 指定特定事業法人の課税の特例の適用期限を2年延長(特措法60条の2)
- 認定研究開発事業法人等の課税の特例の適用期限を1年延長(特措法61条)
追加して決定する税制改正(消費課税)について次回ご紹介します
追加して決定する事項・法人課税関連の概要をご紹介しました。追加する税制改正・消費税関連以降については引続き次回の記事でご紹介します。
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