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過去の記事で種類株を普通株に転換し売却する場合の取扱をご紹介しました。その後の経緯と、減損したその他有価証券の時価が回復した場合の取扱についてご紹介します。

事例の概要

種類株の減損

その他有価証券に区分している市場性の無い種類株式(転換株式)を保有していましたが、種類株の価額(理論値)が著しく下落したため減損処理を行いました。

減損を有税処理

種類株は市場性が無く理論値をもって減損を行う等の事情から減損損失を申告加算しました(法人税法施行令第68条1項2号ロ法人税法基本通達9-1-9)。税務上の簿価が会計上の簿価を上回り将来減算一時差異が生じました。この時点で種類株の売却時期のスケジューリング不能と判定しこの将来減算一時差異を全額評価性引当し繰延税金資産は計上しませんでした(監査委員会報告66号4項)。

普通株式への転換

種類株を処分するに当たり市場性のある普通株への転換を行いました。普通株に転換した時点で既存の普通株と簿価通算を行う方法を過去の記事でご紹介しました。

時価が回復し簿価通算額を上回る

わかり易いように具体例をあげます。以下のように、種類株は減損により将来減算一時差異が発生し、普通株の時価は簿価を上回っていまるため将来加算一時差異が発生していました。

転換前 税務上の簿価 (減損後)会計上の取得原価 時価 将来減算一時差異 将来加算一時差異 株数
転換株 50百万円 24百万円 26百万円 50,000株
普通株 16百万円 16百万円 20百万円  – 4百万円 100,000株

転換株50,000株を転換条件に従い普通株160,000株に転換しました。転換により転換後普通株は時価評価され減損後会計上の簿価を上回りました。

転換後 税務上の簿価 (減損後)会計上の取得原価 時価 将来減算一時差異 将来加算一時差異 株数
普通株転換後 50百万円 24百万円 32百万円 26百万円 160,000株
普通株 16百万円 16百万円 20百万円 4百万円 100,000株
普通株合計 66百万円 40百万円 52百万円 14百万円 260,000株

減損した種類株を普通株に転換し、時価が会計上の簿価を上回った場合の税効果

税務上の簿価と会計上の取得原価に乖離が生じる

もともと普通株と種類株は別銘柄として別個に評価されていました。上の表のように転換株式では将来減算一時差異26百万円が発生し、普通株式では将来加算一時差異4百万円が発生していました。

普通株に転換後、普通株の簿価通算によって、普通株の時価がの会計上の簿価を上回っています。通常であれば将来加算一時差異が12百万円発生している事になりますが、転換前の種類株の税務上の簿価は減損前の50百万円であるため、税務上の簿価66百万円と会計上の減損前取得原価に乖離が生じます。

税効果会計に関するQ&A

この事例のように、減損した種類株を普通株に転換することで、時価が会計上の簿価を上回った場合、税効果会計に関するQ&A、Q3と同じ取扱が必要になると考えられます。

税効果会計に関するQ&A、Q3では、

一時差異が同一の有価証券から生じているため、減損処理後の時価上昇に伴い発生する評価差益は、将来加算一時差異ではなく、将来減算一時差異の戻入と考えられる

と記述されています。

上の事例に当てはめると通常、会計上の取得原価と時価との差額が一時差異となり、将来加算一時差異が12百万円発生している事になります。しかし、税務上の簿価は減損前の種類株をそのまま引き継ぎますので(法人税法施行令119条第1項14号)実際には将来減算一時差異が14百万円(66百万円-52百万円)発生している事になります。

よって、株式転換前の既存の普通株について生じていた繰延税金負債(将来加算一時差異)は全額取崩され、転換株式について生じていた将来減算一時差異(と評価性引当)が12百万円(26百万円-14百万円)取崩されると考えられます。

春日渡辺会計事務所は会計・税務のご相談を承ります

春日渡辺会計事務所は文京区の会計士、税理士事務所です。春日渡辺会計事務所では税効果会計をはじめとする会計・税務に関するご相談をお受けしております。ご質問、御用のある方はお気軽にご連絡下さい。

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