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最近、棚卸資産の評価に関する会計基準に従い簿価切下げを検討する必要がありました。もう棚卸資産の評価に関する会計基準の実務も浸透した感はありますが、興味深い論点もあったのでご紹介します。参考事例としてご理解頂ければ幸いです。

滞留したコンテンツの評価

陳腐化が早いコンテンツが滞留してしまいました。発売間もないコンテンツも陳腐化したコンテンツも一括して管理しています。ですから陳腐化したコンテンツタイトルと陳腐化していないコンテンツタイトルが混在しています。

タイトルの種類は100種類を超えているため1タイトル毎に評価を判断する事は事務的に大変と言う状況でした。

「棚卸資産の評価に関する会計基準」の概要と事例当てはめ

棚卸資産の品目ごとに正味売却価格で評価(原則)

棚卸資産の評価に関する会計基準では

53.棚卸資産に関する投資の成果は、通常、個別品目ごとに確定することから、収益性の低
下を判断し、簿価切下げを行う単位も個別品目単位であることが原則

とされています。

事例に当てはめると原則として、タイトルが切下げ単位になってしまいますが、先に述べた通り1タイトル毎に判断する事は事実上困難です。

グルーピングできる

上述のように収益性の低下は原則個別品目ごとに判断しますが、

53後段.次のような場合には、複数の棚卸資産を一括りとした単位で行う方が投資の成果を適切に示すことができると判断されるため、複数の品目を一括りとして取り扱うことが適当と考えられる

  1. 補完的な関係にある複数商品の売買を行っている企業において、いずれか一方の売買だけでは正常な水準を超えるような収益は見込めないが、双方の売買では正常な水準を超える収益が見込めるような場合
  2. 同じ製品に使われる材料、仕掛品及び製品を 1 グループとして扱う場合

と複数の品目をグルーピングする事を認めています。

今回の事例の場合、どこまでグループにまとめる事ができるでしょうか?

グルーピングの実務上の判断

グループ単位で収益性を判定する場合、グルーピングを粗くすれば、損失を減少させられます。ですからグルーピングを認められる例として

  • 補完的(例えば、サイズや色違いのラインナップ商品群などが考えられます)
  • 同じ製品に使われる材料・仕掛品・製品

とされています。

一方、

一括りとした単位で行う方が投資の成果を適切に示すことができる

と判断できれば、グルーピング可能と読めます。また、この例示について公開草案に対するコメントにおいて、

「次のような場合」としており、特に限定的に考えているということではないことは明らかと思われる。

というASBJのコメントに対する対応があります。必ずしも補完的・同じ製品に使われる棚卸資産でなくても投資の成果を適切に示す事ができればグルーピング可能だと考えられます。

売価還元法によるグルーピング

また興味深いのは以下のように売価還元法のグルーピングが認められている事です。

13.売価還元法を採用している場合においても、期末における正味売却価額が帳簿価額よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とする。

とあり、売価還元法の帳簿価額と正味売却価額によって切下げを行うと規定されていますので、当然売価還元法によるグルーピングをそのまま採用する事を意味します。

連続意見書第四では売価還元法のグルーピングを

商品の自然的分類(形状、性質、等級等の相違による分類)に基づく品種の差異をある程度無視し、異なる品目を値入率、回転率の類似性にしたがって適正なグループにまとめ

という様に、値入率、回転率の類似による事を認めています。売価還元法自体簡便法なので仕方ないのですが、もう、投資の成果という考え方からも離れています。

管理単位がグルーピング単位とされる事にするしかない?

考えてみれば、企業の投資成果判断は棚卸資産の管理単位で行われます。原則品目ごとの判定とは言うもものの、そういう意味では結局在庫管理の単位でグルーピングするという所に落ち着くというのも妥当な気がします。単品毎に原価計算を行っている場合はさすがに単品毎に評価切下げの判断が原則で、グルーピングできるのは例外と思います。

今回の場合、コンテンツを一括で管理して原価計算を行っています。またコンテンツだけがこの会社の製品ではなく一部であり管理方法として、それなりに妥当である以上、この管理単位でグルーピングする事も妥当だと考えました。

正常営業循環を外れた棚卸資産

営業循環過程から外れた滞留又は処分見込等の棚卸資産について、合理的に算定された価額によることが困難な場合には、

9.正味売却価額まで切り下げる方法に代えて、その状況に応じ、次のような方法により収益性の低下の事実を適切に反映するよう処理する。

  1. 帳簿価額を処分見込価額(ゼロ又は備忘価額を含む。)まで切り下げる方法
  2. 一定の回転期間を超える場合、規則的に帳簿価額を切り下げる方法

による事とされています。

今回の事例の場合、一括管理されたコンテンツの正味売却価額を算定する事が困難です。というのも、滞留したタイトルと正常なタイトルとが混在しているため、そのグループの直前の取引価額をもって滞留したタイトルの正味売却価額とすることは無理があります。

一定の回転期間を超えた部分を滞留とみなした

基準には明示されていませんが、一括して管理されているコンテンツの一定の回転期間を超えた数量を滞留タイトルと判断し、規則的に帳簿価格を切り下げる方法を取りました。基準を素直に読むと一定の回転期間を超えた在庫全体に規則的切下げを行う方法になるのですが、事例の状況から、一定期間を超えた部分を滞留と判断するほうがより合理的と考えました。この、規則的な切下げ自体一種の簡便法ですから、事例の方法でも合理的と判断できると思います。

春日渡辺会計事務所は会計・税務のご相談を承ります

春日渡辺会計事務所は文京区の会計士、税理士事務所です。春日渡辺会計事務所で棚卸資産の評価に関する会計基準をはじめとする会計・税務に関するご相談をお受けしております。ご質問、御用のある方はお気軽にご連絡下さい。

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