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7月5日の日経新聞朝刊に会計士協新会長「追加監査、報酬に反映」 不正リスクに対応、という記事が掲載されました。10年以上大手監査法人でどっぷり監査に漬かり、今は監査法人のそとで企業をサポートしている会計士・税理士として思うところをご紹介します。

契約書に書いたからお金が取れるか?

私が最初に思ったのは監査を受ける側の被監査会社が追加報酬を払うのは、不正による重要な虚偽記載があった場合だけになるのではないかという事でした。会計士が不正リスクを識別して追加手続を実施して重要な虚偽表示につながる様な不正を識別できなかった場合、追加報酬を被監査会社が大人しく払うとは到底思えません。被監査会社側からすれば、会計士が勝手に騒ぎ出し、痛くない腹を探られて、監査対応コストが増加し、それで報酬まで払えと言われてハイお支払いしますとなるでしょうか。

重要な虚偽表示につながるような不正を大事にならない段階で検出するためには、不正対応手続を100回やって1,2回当たりが出て、残り99回は空振りになるのを覚悟して手続する必要があると思います。会計士協会が契約書の雛形を作るだけで、この空振りの99回分のコストを被監査会社側が負担するというコンセンサスを得るのは厳しいと思います。
手続を増やしてもお金が取れなければ、会計士側は行き詰まります。更に言うと、不正で大事になってしまったら、監査の失敗であり報酬云々とは次元の違う問題になってしまいます。どちらにしても良い事はありません。

逆選択!?

ここまで書いて、変な考えが浮かんでしまいました。会計士からみて被監査会社が不正をしているかしていないかは分りません。不正を必ず検出しなければならない場合、実際の不正の有無に関わらず、不正があるという前提で監査をすることになります(不正リスク対応基準もそんなニュアンスです)。

被監査会社側は不正をするしないに関わらず不正を前提とした監査に対応しなければなりません。不正をしていない、不正をしない企業からすると、不正をしている企業の分まで追加的な監査コストを負担することになります。

経済学やゲーム理論ではこのような情報の非対称性が存在する場合「逆選択」という状況が起こるとされています。この例で言うなら不正をしない会社は追加的なコストを負担するのを嫌がり監査市場から撤退(非上場化など)する誘因が発生します。会計士にとって、不正対応手続を理由にした報酬増加の働きかけは監査報酬監査市場の縮小を招きかねないという事になってしまいます。

報酬アップには納得感が必要

ルール(規制)を作って、規制によって報酬を増やしてもらうのも必要かもしれませんが、被監査会社の皆様に報酬に見合うメリットを提供することが本来の姿です。監査という業務の性質上、被監査会社に直接的なメリットを提示するのが難しいのは確かです。そこの所は私にも根本的な解決策はわかりません。

とは言うものの、被監査会社に納得感を持ってもらう努力も必要と感じています。公認会計士の皆様が厳しい環境のもとでご尽力されているのは理解しますし、私も10数年監査に従事してきましたから余り後ろ向きの事は言いたくないですが、私から見ても大手監査法人の監査手続は為にする手続、訴訟対策の為の手続、間接部門の稼働率を維持するための手続、つまり被監査会社を向いていない手続の割合がどんどん増えている様に思います。

そういった為する手続を思い切って減らす努力をして、その分をクライアントを理解する事に振り向ける事にだろうと思います。その理解からクライアントに提供できるサービスを見つける事だと思います。

クライアントに貢献するのが会計士・税理士の生きる道

単なる「被監査会社」から信頼される「クライアント」にするにはどうすれば良いか必死で考える。クライアントに共感しその理想を共に追い求める。「独立性」や「二重責任」という言葉を言い訳にしない、本当に難しい事だとは思いますが、それが会計士・税理士の生きる道だと考えています。

春日渡辺会計事務所は企業家の皆様をサポートします。ご意見、ご相談のある方のご連絡をお待ちしております。

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