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前回の株主総会に関する記事では株主の質問権と議長の説明義務についてご紹介しました。引き続き株主総会運営のポイントの一つである、動議の取り扱いについてご紹介します。総会運営にあたって重要なのは、動議を適法に取り扱う事だと思います。動議の取り扱いを誤ると総会の瑕疵原因となるおそれがあるからです。よって、動議の内容が会社法上どう規定されているか考える必要があります。

議案に関する動議と議事運営に関する動議

株主には株主総会で動議を提出する権利があります(会社法304条)。明文上は「株主総会の目的である事項」につき動議(提案)を提出できるとなっています。総会の目的に関する事項とは具体的には総会の議案の事です。また明文規定はありませんが議事運営に関する動議も提出することができると考えられます。

議事運営に関する動議の取り扱い

少なくとも明文上株主権が認められている動議については議場に諮る必要があります。例えば以下の動議です。

  • 株主総会の延期・続行(317条)
  • 資料等調査人の選任(316条)
  • 会計監査人の出席(398条2項)
  • 議長不信任

一方議事整理が議長の権限に属していることもあり、例えば以下の動議は議長の権限で動議を処理することができます。

  • 休憩
  • 議案審議順序変更
  • 役員等選任の場合の一括審議
  • 質疑打切り、続行
  • 採決方法
  • 質疑時間の短縮延長

ただし議場に諮る必要の有無は明確でない場合も多く、顧問弁護士に確認しつつ処理するのが望ましいといえます。特に法の予定する原則的な議事進行を要求する動議は議場に諮るほうが安全です。事前の想定問答に予定していない動議が出された場合などその場で適切に法的判断を下すのが難しい場合などは議場に諮った上で否決するという方法でもかまわないと思います。

議事運営に関する動議の採決は、株主総会に出席した株主の議決権数によります。議決権行使書は議案に関する賛否を示し、その他の事について賛否を示すものではないからです。

議案に関する動議の取り扱い

株主総会で株主が提出できる動議は、招集通知に記載された議題または議案の修正であると言われています。議案の修正は無制限に提出できるわけではなく、招集通知に記載された株主総会の目的事項たる事項から一般的に予見し得る範囲を超えることはできないと考えられています。

「一般的に予見できる範囲」は総論として議案の同一性の範囲内での修正動議のみ許されると考えられています。議案をより制限する動議(員数、金額などの上限を引下げる動議)や議案そのものを変更しない動議は範囲内として許されるとされているようです。

一般論では下記の表の通りと言われています。ただし、以下の一般論が必ずしも絶対的な見解ではなく、想定していない動議が提出された場合、その場で適切に法的判断を下すのが難しい場合もありますので、想定外の動議は議場に諮った上で否決するという方法も実際上は考えられます。

動議の内容 予見可能か否か 備考
配当金額の減額または増額 可能 不能とする説もあり
取締役・監査役選任議案の修正動議 可能 提案された候補者以外の者を修正動議として提案することはできるが、議案に員数を表示しているときは、この員数の範囲内でのみ可能
締役・監査役の報酬の変更 可能 減額修正は許される。増額の動議は許されない
定款変更議案の修正動議 可能 提案された議案の内容を一部修正あるいは字句の修正の範囲などに限られる

余談ですが、「会社法では定款変更につき、議題は「定款一部変更の件」というだけとなったので、当日会社提案の条文以外の条文を変更すべきとする議案提案が、適法な提案、動議となってしまったことから、議長はこれを受けた上で採決しなければならなくなったといえる」とする見解が掲載され、話題になりました。この見解は超メジャーな専門誌でもいまだに掲載されているそうです。

動議の採決は議決権行使書で原案に賛成の議決権は修正動議に反対と取り扱い、原案に反対の議決権は修正動議に対しては棄権と取り扱うのが多数説といわれています。

動議の採決方法

動議の採決方法は、原案を先に採決する方式が一般的です。特に上場会社の場合、議案に関する動議を採決した場合、臨時報告書に修正動議の採決結果を記載する必要があります。修正動議の賛否の議決権の数を集計することは事務作業が煩雑になるため原案を先に採決しそれをもって修正動議は否決されたと扱うことで動議にたいする議決権の集計を行う必要がなくなります。また、嫌がらせ的に動議を提出する株主に議事進行のイニシアチブをとらせない為に、先に会社原案を可決するという考えもあります。

7月には入り3月決算会社の株主総会は終息しました。株主総会の運営については他にも様々な要点があります。また時期をみてブログでご紹介します。

春日渡辺会計事務所は株主総会の運営をサポートします。疑問点、御用のある方はお気軽にご連絡下さい。

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