平成30年6月6日に「生産性向上特別措置法」が施行されました。生産性向上特別措置法に基づく優遇措置のうち償却資産税の軽減措置について、「中小企業等経営強化法」に基づく軽減措置との比較を中心にご紹介します。また、太陽光発電設備を対象とした申請についても事例をご紹介します。
生産性向上特別措置法に基づく償却資産税軽減措置の概要
生産性向上特別措置法に基づく償却資産税の軽減措置の概要は下記の通りとなります。
- 国から「導入促進基本計画」の同意を受けた自治体に対して
- 中小企業・小規模事業者等の事業者が生産性向上の為の設備導入にかかる「先端設備導入計画」の認定を受ける事で
- 当該設備の償却資産税課税標準を3年間ゼロ~1/2間で市町村の定める割合に軽減
の軽減措置を受けられる制度です。(以上中小企業庁Webを要約)
中小企業等経営強化法に基づく軽減措置との比較
生産性向上特別措置法に基づく軽減以前にも、償却資産税の軽減措置を受けられる制度として「中小企業等経営強化法」に基づく軽減措置がありました。この両制度を比較する形で生産性向上特別措置法に基づく軽減の詳細をご紹介します。中小企業等経営強化法に基づく軽減については以前ご紹介しておりますのであわせてご参照ください。
中小企業等経営強化法に基づく軽減措置との主要な相違点
重要な相違点は以下となります。
- 50%減免から100%減免に軽減拡大
- 期限が平成31年3月末まで、から平成33年3月末(以下「平成」表記)までに拡大
- 経営革新等認定支援機関の関与が必須
- 認定主体が国ではなく地方自治体。自治体ごとの可否判断
- 設備取得前の認定が必要でスケジュールが厳しくなった
軽減の割合については上記の通り50%~100%の範囲で自治体に裁量があります。ただし、多くの自治体で100%の軽減となっています。(参考:平成30年9月末までに先端設備等導入に伴う固定資産税ゼロの措置を講じた自治体を公表します(平成30年10月26日))また、期限が平成33年3月末に延長されました。そして認定支援機関の関与が任意から必須となり、認定支援機関による確認書が申請に必要となります。
重要な変更として認定主体が設備を導入所在地の自治体となった事です。現実問題として実際の認定申請にあたり、自治体ごとにかなり手続・判断にバラツキがありました。後ほどこの点についてもご紹介します。また、設備取得後60日以内の経営力向上計画の申請から設備取得前の先端設備導入計画認定が必要となりスケジュールも前倒しとなっています。また生産性向上の条件が年平均3%に上がっています。
以下相違点の要約となります。
制度 | 中小企業等経営強化法 | 生産性向上特別措置法 |
---|---|---|
対象企業 | 中小企業等 | 同左 |
軽減 | 固定資産税が3年間1/2 | 固定資産税が3年間ゼロ~1/2 |
対象設備 | 原則として工業会証明書を取得した機械装置 | 工業会証明書を取得した機械装置、工具器具備品、建物附属設備(自治体の基本方針による) |
申請先 | 設備設置場所または本社を管轄する経済産業局 | 設備設置先の市町村 |
判断基準 | 労働生産性向上(年平均1%~2%) 経営力向上を事業分野別指針に沿って記載 |
労働生産性向上(年平均3%) 労働生産性向上の見込を記載(指針は特に無し) |
認定支援機関の関与 | 関与は任意 | 関与は必須 |
工業会証明書 | 原則として認定申請時に提出 | 申請後年内提出可 |
期限 | 設備取得後60日以内の申請 | 設備取得前の認定 |
太陽光発電設備に対する自治体の判断
太陽光発電設備を対象にした実際の申請での事例と自治体による判断の違いについてご紹介します。
設立初年度の取扱
太陽光発電による売電事業をこれから開始される方は設立または開業の1期目での申請となる場合があります。この点「先端設備等導入計画に関するQ&A」において「創業間もない企業は認定を受けられるのか。」というQAがあり、以下のように記述されています。
Q:創業間もない企業は認定を受けられるのか。
A:認定を受けるためには労働生産性の現状値と目標値が把握できる必要があるため、創業間もない企業については認定は受けられません。他方で、1事業年度の実績がない場合でも、労働生産性を構成する数値が把握でき、現状値を算出できる場合は、認定を受けることができます。
つまり、(原則)創業間もない企業は認定を受けられないが(例外)現状値を算出できる場合は認定を受けられるとされています。この部分で自治体の判断が分かれる場合がありました。具体的には1基目の太陽光発電設備を取得するまでの開業準備等の実績に基づく労働生産性を算出し、設備取得後の労働生産性の向上の年平均を計算する事を認める自治体と認めない自治体がありました。この点特に上記QAを念頭に事前に対象自治体に問合せする必要があります。逆にQAの記述で原則創業間もない企業は認定を受けられない、とありますが上記の算出方法で認定を受けられる場合があるという事は重要なポイントと考えられます。また申請書別紙において事業者の概況を記載しますが、そこで設立年度をきちんと記載し、創業間もない企業だが労働生産性を算出した旨明記する必要があると思われます。
太陽光発電事業の取扱
上で触れた通り自治体は「導入促進基本計画」を策定します。基本計画は対外的にも公表されこの中に対象設備、対象業種など記載されています。この「導入促進基本計画」が誤っていて太陽光発電設備について先端設備導入計画が受理されなかった事がありました。自治体の導入基本計画がたとえ誤っていたとしても、国が同意し対外的にも発表している内容が受理されないというのは通常考えられない事ですが、結局受理されなかった場合もあります。現実問題として限られたリソースしかない自治体ではこういう事もありうるという事は留意する必要があります。
また、「導入促進基本計画」は改定されることもあるとの事で、太陽光発電事業について今は認めているが見直しを進めているという自治体もありました。
上記の通り、認定主体である自治体の裁量が大きく、判断にもかなりばらつきがある傾向があり、先端設備導入計画認定申請にあたっては自治体と綿密に連絡を取る必要があると考えられます。
認定件数の目標値について
余談ですが、自治体の「導入促進基本計画」には「目標」という項目があり、ここには自治体での認定目標件数が記載されています。この件数の意味合いですが目標に到達したらそこで締め切るという事で「早い者勝ち」という意味かどうか気になり各自治体に尋ねました。今のところ全ての自治体で目標に達したから締め切る事は無い、早い者勝ちという事は無いという姿勢です。
ただし、これも自治体によっては考え方が相違する可能性もあり得るのではないかと思われます。
申請手続について
単純な手続の問題ですが意外に重要な事項として申請手続の方法があります。多くの自治体では郵送による申請を認めているのですが、しばしば自治体窓口まで申請書を持参する事を求められる場合があります。太陽光発電設備の場合土地の確保がしやすい地方で建設されることが多く、事業者の本拠地からかなり遠隔の自治体まで申請に出向く必要があります。その場合、スケジュールや旅費交通費、代理を立てる場合であれば委任状の要否などあらかじめ検討する必要があると思われます。
生産性向上特別措置法に基づく事前確認・先端設備導入計画認定申請手続支援を承ります
今回の記事では、申請書の準備についてご紹介しました。生産性向上特別措置法に基づく先端設備導入計画認定の手続では「認定支援機関による確認書」が必要となります。また設備投資による生産性向上要件を満たす事の説明を求められます。この事前確認・申請支援を承ります。その他ご質問等々も歓迎いたします。生産性向上特別措置法にかかかるご相談は以下のフォームまたはメールで承ります。
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