お盆休みの時期になりました。まだまだ暑いですが暦の上では立秋を過ぎ、残暑お見舞いのご挨拶です。
私の方は4月来3月決算、申告、株主総会、第1四半期決算とバタバタしておりましてブログの更新も滞っておりました。最近やっと落ち着きつつあります。
先日ある会社の役員の方から「監査委員会設置会社」の概要についてお尋ねを受けたので、調べた事を備忘記録がてらご紹介します。
改正会社法と「監査等委員会設置会社」
「会社法の一部を改正する法律案」が平成25年11月29日付けで国会に提出、平成26年4月25日に衆議院通過、6月20日参議院で可決成立しました。改正会社法の中に「監査等委員会設置会社」という機関設計が創設されました。
監査等委員会設置会社の構成
監査等委員会設置会社は、監査等委員会が定款の定めにより設置され(326条2項)、取締役会および会計監査人によって構成されます(327条1項3号、5項)。監査役会は置いてはならないとされました(327条4項)。取締役は監査等委員である取締役とそれ以外の取締役に分かれます。総会での選任も監査等委員である取締役とそれ以外の取締役とは区分されます(329条2項)。
監査等委員会は3名以上の取締役で構成され、その過半数は社外取締役でなければなりません(331条6項)。従って監査等委員会設置会社においては、最低2名の社外取締役が選任されることになります。
監査等委員会では常勤の監査等委員を置くことは求められていません(331条6項)。監査等委員会では、会社の内部統制システムを利用し内部統制部門を指揮命令することで監査を行うことを想定している為です。
選任
先に述べた通り、監査等委員である取締役とそれ以外の取締役は区別して選任されます。そこで株主総会で監査等委員である取締役の選任議案とそれ以外の取締役の選任議案は個別に付議されます。
監査等委員である取締役の選任議案の提出に際しては、監査等委員会の同意を得なければならないとされています(342条の2第1項)。また監査等委員である取締役を辞任した者は、辞任後最初に招集される株主総会に出席して、辞任した旨およびその理由を述べることができます(342条の2第2項)。これらの点は監査役の選任と同様の位置づけになっています。監査等委員会設置会社特有の規定としては、監査等委員以外の取締役の選解任についても監査等委員会は意見を述べることができます(342条の2第4項)。
任期
監査等委員である取締役の任期は2年で短縮できません(332条第3項)。監査委員以外の取締役の任期は1年です(332条第4項)
この制度設計は、監査等委員である取締役の独立性を確保する観点から、それ以外の取締役の任期より長くすべきである事と、一方取締役として経営の決定に関与することから、監査役と同じ4年の任期では長すぎると考えられた為と言われています。
報酬
監査等委員会設置会社では、選任の場合と同様に報酬の額も監査等委員である取締役とそれ以外の取締役を区別して定めます(361条2項)。監査役会設置会社が取締役の報酬と監査役の報酬を別に決議するのと同旨と考えられます。
監査等委員である取締役は、協議によって個別の報酬等を決定します(361条3項)。また、艦等委員の報酬等に関して監査等委員である取締役は総会で意見を述べることができます(361条3項)。それ以外の取締役の報酬に関しては監査等委員会が選定する監査等委員が総会で意見を述べることができます(361条6項)。
監査等委員が果たすべき役割
上述の通り監査等委員でない取締役の選任解任報酬について監査委員会は意見を述べることができます。監査等委員会は社外取締役が過半数を占めますので、取締役の選任解任報酬に対する意見陳述を通じて社外取締役の経営の監督機能が発揮されることが予定されています。
監査等委員と監査等委員会の権限
監査報告書の作成
監査役設置会社では個々の監査役が監査報告書を作成した上、監査役会監査報告書が作成されます(381条1項)一方監査等委員会設置会社においては、ここの監査等委員である取締役の監査報告書はなく、監査等委員会として監査報告書を作成します(399条の2第3項2号)。
取締役の業務執行監査
監査等委員は取締役の不正・法令定款違反・不当な業務執行があると認められるときは、遅滞なく取締役会へ報告する義務があります(399条の4)。
監査等委員は取締役が法令定款に違反する行為をする、するおそれがある場合において、会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは取締役の行為の差止め請求ができます(399条の6第1項)。
監査等委員は取締役が総会に提出しようとする議案、書類について法令定款違反・不当な事項があると認めるときは総会へ報告する義務があります(399条の5)。
会計監査人の選任解任
監査等委員会は会計監査人の選任・解任と再任しない事に関する株主総会議案の内容を決定する権限を有します(399条の2第3項2号)。
改正前会社法では、監査役会は会計監査人の選任・解任と再任しない事に関する株主総会議案の同意権を有しますが(改正前344条1項)、これが決定権となります(344条1項)。監査委員会と監査役会が会計監査人に対して同等の権限を有することになります。
次回は監査等委員会設置会社の特徴と活用
長くなりましたので、ここで一区切りとします。次回は次回は監査等委員会設置会社の特徴と活用ついてご紹介します。
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