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前回の記事から引続き、「経営改善計画策定支援事業に関する研修会」の内容をもとに金融機関が納得する事業計画についてご紹介します。関連記事はこちら

事業の内容の記述

計数計画・具体的な施策

「計数計画・具体的な施策」においては将来の具体的な施策とその結果としての将来の計数計画を記載します。

過去の記事で「金融検査マニュアル」や「中小・地域金融機関向け監督方針」を引いて、計画には

  • 合理性
  • 実現可能性

が重要である旨ご紹介しました。

今回の記事では研修で解説された具体例や業種ごとの特性をご紹介します。

製造業の主な論点:製造原価

製造原価要素別分析

製造業において重要な論点は製造原価です。製造原価の主要な要素には材料費、労務費、経費です。売上と製造原価との整合性(比率)を要素ごとに時系列で推移を取る事で、具体的な施策の手がかりをつかみます。

製造原価明細(例)
H22/3 H23/3 H24/3 H25/3
売上 700 600 720 700
製造原価 560 540 620 620
80% 90% 86% 89%
内訳
材料費 280 300 360 360
労務費 120 180 180 180
経費 ×× ×× ×× ××

 

上の例ではH23/3以降、売上が減少しているにもかかわらず、材料費と労務費が増加し原価率が高どまりしています。H23/3期に材料費と労務費に何らかの状況変化があったと考えられます。

時系列分析の他に、中小企業庁などから業種別の経営指標が公表されています。これらの業界平均と自社実績を比較し自社の改善点の手がかりを探ります。

原価分析の深堀り

原価要素と時期のあたりがついたら更に深化した分析を進めます。

「原価の要素別」と「製造工程」の2つの切り口で、財務数値に表れてくる問題点と現実の会社業務(工程)の問題点との結びつきを探し出します。原価要素に表れてくる工程の問題点の典型事例として以下があります。

原価要素の問題点 工程の問題点
材料費高 設計部門が弱く歩留率低く不良多。生産工程を理解しない設計のため不良率高い
労務費高,外注費高 短納期対応が多く工程の組替え、手戻りが発生。営業と工場の連携不足によ納期が集中し稼働率が不安定、繁忙期と閑散期の稼働率の差が大きい。
材料費高 営業が客先仕様を理解せず過剰品質
外注費高 工程表の見直しが無く稼働率低くても外注する
売上減 原価が高く他社に価格競争で負ける。納期遅れで他社にシェアを奪われる。

この様な分析により何が問題であるかを明らかにします。

業務プロセスの改善

把握した業務プロセスの問題点の改善案を策定します。まず材料費、労務費、経費の単位当たり原価を各工程毎に算出します。ここで固定費と変動費を分解するかですが、ざっくりで良いので固定費と変動費を分けて変動費について単位当たり材料費、労務費、経費を算出します。

次に先に洗い出したプロセスの問題点をどう改善するか、改善することで原価要素(投入材料、労働時間、稼働時間)がどの様に改善するかの分析と財務数値の変動の試算を行います。この試算結果が経営計画の基礎になります。よってプロセスの改善と原価要素の変化の合理生が計画の説得力のカギとなります。

製造業の具体的な論点:在庫

製造業に限らず、在庫を販売することで資金回収できます。この在庫資金回収に問題が発生している事により経営上の課題となっている場合も多いのです。そのような場合経営の歪みが在庫に集約されています。

経営計画の在庫評価は事業性(キャッシュフローの有無と程度)で判断

最終的に在庫は資金回収されて、その資金を次の生産に投入しなければ経営ができません。よって資金回収(キャッシュフロー)の有無と程度が評価の基準になります。これは帳簿価格や税務上の評価額とは一致しないことがあり、注意が必要です。

在庫に表出する問題点

先に述べたように在庫に経営の歪みが集約されている事があります。以下でどのような問題があり得るのかご紹介します。

  • 滞留。滞留在庫は回収可能額が下がっていることがままあります。シーズン落ちの衣料品、客先都合の納期遅れ、客先特注品のキャンセルなど滞留の原因と回収可能性の検討が必要です。
  • 循環取引。滞留品が該当する場合もありますが、書類上、伝票上で形式的取引を行いあたかも資金回収されているようにみえて実は一連の会社内で循環しているだけと言う事があります。このような在庫には実質的に資金回収価値は著しく低下しています。
  • 架空在庫。在庫そのものが架空計上されている事もあります。実地棚卸が必要です。

製造業の具体的な論点:生産販売のアンマッチ

製造の現場で

  • 受注数≦完成数
  • 完成予定日と完成日のずれ

が多数発生している場合、無駄の原因になります。製造業ではこのアンマッチも経営課題として計画に織り込む事が考えられます。

この問題を突き詰めると、「生産能力」と「受注」のアンマッチに行き当たります。この製造業のアンマッチは中小企業だけでなく大企業にも存在し、その解消が収益向上の源泉の一つになるほどの重要さがあると講義を受けました。

別の切り口からみた計画のポイント

経営計画のポイントについて「金融検査マニュアル」「中小・地域金融機関向け監督方針」を引き合いにご紹介しました。最後にそれらには記載が無いが、銀行をはじめとする利害関係者や企業にとって重要なポイントとして、以下の点が紹介されました。

明確な論点整理~論点の網羅性よりもメリハリ、順序立て

業種の特性によって重要な論点が異なります。論点のすべてを網羅する必要は無く、該当業種で重要な論点を優先した方が良いと考えられます。

スピード感を持つ

特に窮状にある企業の場合、すばらしい課題解決法が示されたとしても効果に時間がかかると企業が倒産してしまうこともあります。即企業の意思で実現可能な事項(役員報酬のカット等)経営者にかかわる部分から着手しなければなりません

経営者が納得できる計画

銀行との折衝の中でいまいち腹に落ちないまま計画を作ってしまうと計画の実行段階で結局支障がでて再度計画を作り直す事になるかもしません。銀行も企業やその業界のすべてを理解しているわけではありません。従来のやり方に固執してはいけませんが、実行できる実感がわくまで銀行をはじめとする関係者と話し合って下さい。経営者の感じている違和感はどんな場合でも傾聴に値するものです。銀行にうまく伝える努力、銀行をはじめとする関係者の意図を汲み取る努力を行ってください。

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