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前回の記事から引続き、「経営改善計画策定支援事業に関する研修会」の内容をもとに金融機関が納得する事業計画についてご紹介します。関連記事はこちら

計画の合理性・実現可能性

前回の記事で銀行が債権区分や債務者区分を落とさないための計画についてご紹介しました。その中の「金融検査マニュアル」や「中小・地域金融機関向け監督方針」にキーワードがあります。

計画の合理性

「金融検査マニュアル」P211

において、

経営改善計画等が合理的

とあります。「合理的」である事が必要です。もともと計画は将来の見積もりであり不確実なものです。計画が信頼できるかどうかを判断する為に「合理性」が重視されているのです。

合理的な計画という為に重要なのは計画の前提と結果の整合性が確保されているかだと考えます。具体的には

  1. 計画の行動から決算情報を説明できるか
  2. 計画が全体として矛盾が無いか
  3. 過去の実績と計画の内容の乖離状況や大きい乖離の理由付け
  4. 前提条件となる情報の信頼性はあるか

等々考えられます。

計画の行動から決算情報を説明できるか

「実行計画」から「損益・キャッシュフロー・財務計画」を具体的に説明できるかが重要です。例えば

営業を強化して売上を10%増加させる。

という計画を策定したとします。「営業の強化」という行動から「売上10%増」という数字をどのように裏付けを持って説明するかという意味です。

「売上10%」のような外部要因に左右される事の説明は難しいのですがポイントは可能な限り具体的な行動計画まで詳細を詰める事です。「営業の強化」とは具体的に何をする事でしょうか?営業担当者の数を増やす事でしょうか?広告宣伝費を増やす事でしょうか?広告媒体を増やす事でしょうか?それによってどのような効果が期待できますか?これらを数字の裏づけを持って説明できれば計画の合理性は高まります。以下の例示を参考にしてみます。

良い例・悪い例
行動 決算情報 説明
良い例 営業を強化する 売上10%増 営業担当者を20%・3名増員し未開拓先への営業を行う。担当1名につき月間15件案件開拓を実施する。市場環境は○○レポートから安定的であり、過去の実績から成約率2%は達成可能である。よって年間追加受注10件・○○百万円の売上増が見込まれ・・・
悪い例 営業担当者を増加させて全社一丸となって新規案件開拓を積極的に行い、売上増を達成する・・・

行動と目標となる決算情報との関連や達成の道筋を出来るだけ具体的に数字の裏付けを持って説明している方が明らかに合理性があり説得力があります。一方単に「強化」「一丸」「積極的」という説明だけでは計画の合理性は判断しにくくなります。

この様な説明は単に一般論にとどまらない事業に対する深い理解が不可欠です。特に中小企業の場合は、計画に合理性を持たせるためには社長やそれに近い立場のマネジメント層が計画の策定に関与することが必要になります。

計画が全体として矛盾が無いか

当然の事ですが計画全体の整合性が重要です。上の例では「営業活動の強化」を計画しています。一方でコスト削減策として広告宣伝費・営業部門の人件費削減を計画に織り込んでいたりすると整合性の取れていない計画になってしまいます。計画が全体として矛盾なく整合している事が求められます。

過去の実績と計画の内容の乖離

事業や会社は連続しているものです。過去の事業の実績と将来の計画の見通しが大きく乖離しているとその理由付けが必要になります。今まで達成できなかった事をこれから達成すると言うためには、過去の実績や経緯を詳細に分析し、どこをどう変えて計画を達成するのかを上であげた様に具体的な数字の裏づけを持って説明できる事が必要です。それでもなお過去の実績から大きく乖離しているとその合理性は判断しにくくなります。

前提条件となる情報の信頼性

計画は将来を見積りますので、さまざまな仮定や前提条件をおいた上で策定されます。仮定や前提条件の信頼性が高いほど計画の合理性も説明しやすくなります。

例えば同業・類似他社の達成している業績指標や自社の実績や外部の各種統計指標、コンサルタントや専門家や金融機関から入手した業界の動向などの客観的な情報に基づく仮定や前提条件により計画を策定すると合理性を説明しやすくなります。

計画の実現可能性

「金融検査マニュアル」では

実現可能性

ということも求められています。

実現可能性の判断としては

  1. 期間
  2. 計画の達成状況
  3. 関係者の合意

が検討対象となることが多いです。

期間

繰返しになりますが計画は将来の見込みですから不確実性があります。そして計画が長期になればなるほど不確実性は増加します。よって達成に長い期間を要する計画は実現可能性を説明することが難しくなります。

また長期の計画を策定した場合、遠い将来に良好な業績を策定したり、計画の最終年度で一気に債務を返済する(テールヘビー)な計画を策定して辻褄を合わせてしまう事になりがちです。このような遠い将来の業績に依存する計画は課題を先送りしていると取られてしまいます。

計画の期間は長くて5年~7年というところではないでしょうか?たとえば「金融検査マニュアル」では更生計画等が合理的で実現可能な計画(実合計画)である条件として

当該債務者の債務者区分が原 則として概ね5年以内に正常先となる計画(中略)

ただし、当該債務者の債務者区分が5年を超え概ね 10 年以内に正常先となる計画となっている場合で、更生計画等の認可決定後一定期間が経過し、更生計画等の進捗状況が概ね計画以上であり、今後も概ね計画どおりに推移すると認められる場合を含む。

とされています。原則5年以内、5年超の場合は計画の進捗状況が計画を上回っていてその場合でも10年を超えると実現可能ではないというところでしょう。経営改善計画についてもほぼ同趣旨の取り扱いがされます。

達成状況

計画の達成状況も実現可能性の判断基準になります。中途で進捗が計画を下回ってしまうと、その後のリカバリーが難しくなりますし、更に下ぶれする可能性が高いと判断されます。合理性でご紹介した過去の実績と計画の乖離と同趣旨です。

関係者の合意

経営再建や経営改善には金融機関を始めとする取引先や株主や従業員やその他様々の利害関係者の支援や協力を受ける場合があります。その過程で各種利害関係者にも有形無形の負担をかける場合があります。これらの利害関係者との合意を得られているか否かも実現可能性の判断基準になります。

関係者の合意を得るために経営者として負うべき責任を誠実に負う態度が必要です。

次回以降で具体的な計画の策定についてご紹介します

今回の記事で「金融検査マニュアル」にある計画の合理性・実現可能性についてご紹介しました。債務者区分のランクアップを認めるためにはもう少し詳細な条件が金融検査マニュアルにおいて記載されています。とは言え金融機関を納得させる計画の趣旨はご紹介できたと思います。次回以降は「経営改善計画」の具体的な記載内容や策定についてご紹介したいと思います。

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