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消費税率引上げに伴う論点のうち資産の貸付けの税率等に関する経過措置で不動産賃貸取引に関する論点をご紹介します。不動産賃貸取引もこの経過措置の適用を受けます(国税庁Q&A問37等)。経過措置があることで施行日(平成26年4月1日)以降の消費税率を単純に8%に引上げられない場合があり却って複雑な制度になっています。多くの事業者の方が賃貸契約で事業所を利用され、多くの方に関わる経過措置なので今回ご紹介します。

資産の貸付けの税率等に関する経過措置の概要

以前の記事でご紹介しましたが旧消費税率が適用される契約として

  • 平成8年10月1日から指定日の前日(平成25年9月30 日)までの間に締結した資産の貸付けに係る契約に基づく
  • 施行日前から引き続き当該契約に係る資産の貸付けを行っている場合

下記の1および2又は1および3に該当する取引は施行日後の貸付であっても旧消費税率(5%)が適用されます。

  1. 貸付期間及びその期間中の対価の額が定められている
  2. 当該対価の額の変更を求めることができる旨の定めがない
  3. 解約の申入れをすることができる旨の定めがないこと並びに当該貸付けに係る資産の取得に要した費用の額及び付随費用の額の合計額のうちに当該契約期間中に支払われる当該資産の貸付けの対価の額の合計額の占める割合が 100 分の 90 以上であるように当該契約において定められている

要件3の検討が必要なのはごく稀なケースで不動産賃貸取引とはほとんど関係ないと考えられますので(詳細はこちらを参照)、実質的に1,2だけが関係します。

不動産賃貸取引で検討すべき論点

自動更新条項がある場合の契約期間

更新時期ごとに新たな契約を行っているとして適用関係を判断します。つまり直近の更新時期が平成8年10月1日から指定日の前日(平成25年9月30 日)までの間であればその他の要件を満たせば経過措置の対象となります(国税庁Q&A問37)。

賃料改定の定めがある場合

賃料改定の定めがある場合は要件2に当てはまらないので経過措置の対象にはなりません。

ただし一定期間ごとに賃料改定を行う条項の場合、その期間中は要件2を満たすこととなります。(国税庁Q&A問41)

消費税率改定に関する定めのある場合

「消費税率の改正があったときは改正後の税率による」旨の定めがある場合要件2「当該対価の額の変更」にはあたりません。よってその他の要件を満たせば経過措置の適用対象となります。

ただしこの条項にしたがって税率を改定した場合適用対象ではなくなります。(国税庁Q&A問42)

借主として検討すべき事

経過措置の適用関係の確認

現在締結している賃貸契約をチェックして経過措置の適用対象となるか否かを検討する事をお勧めしたいと思います。本来は大家さんの側に通知義務がある消費税改正法附則第5条8項のですが個人大家さんなどあらかじめ4月以降経過措置の適用関係を含め合意をしておいた方が間違いが無いと思います。

消費税率改定条項がある場合は交渉が必要

特に注意が必要なのは消費税率改正条項がある場合です。経過措置の要件を満たせば5%の旧消費税率を適用できますが、消費税率改定条項に従って8%を適用する事も認められます。借主側としては後で仕入税額控除ができるとはいえ資金的には5%のままの方が有利ですが一方大家さんの側は後で納付するとはいえおそらく8%の方が有利です。

何もしないと大家さん側からは施行日から8%で請求されますので多額の賃借料を負担する事業者は影響がでます。消費税率改定条項があっても5%の経過措置を適用できないか交渉する意義はあります。

適用関係に誤りがあった場合

適用関係を誤った場合つまり本来経過措置の適用を対象で5%の消費税率が適用される賃貸借取引に8%の税率を適用した場合はどうなるでしょうか。

おそらく消費税改正法附則第5条4項但書の適用を受けて対価の変更があったものとして経過措置適用対象外として扱われるのではないかと思います

(国税庁Q&A問42)において契約の消費税率改定条項がに従った場合は経過措置適用対象外としていますが、その根拠としてく消費税改正法附則第5条4項但書をあげています。当該但書には

ただし、指定日以後に当該資産の貸付けの対価の額の変更が行われた場合には、当該変更後における当該資産の貸付けについては、この限りでない。

とあり税率改定条項に従うことは新たに対価の額を決めたことと取り扱っています。適用関係を誤って8%消費税率を適用した場合であってもおそらく「対価の額の変更」と取り扱われ経過措置の適用範囲外とされる可能性が高いと思います。

誤った場合5%しか控除できない可能性も0ではない

経過措置は容認規定ではないので要件をみたせば経過措置を適用する必要があります。よって事業者間で適用を誤り経過措置対象取引に5%ではなく8%の消費税率を適用した場合、経過措置に従い5%しか仕入税額控除できない可能性も0ではありません。先に述べた様に「対価の変更」とされる可能性が高いと思いますが本体価格自体は変更していないのですから経過措置の対象とされる余地は0とは言え無いと思います。

無用の混乱を避けるためには先に述べたように借主の側でも適用関係の検討を行い大家さん側とあらかじめ話をつけておくのが望ましいと思います。

春日渡辺会計事務所は消費税率引上げに伴うご相談を承ります

春日渡辺会計事務所は文京区の会計士、税理士事務所です。春日渡辺会計事務所では消費税率引上げを始めとする会計・税務に関するご相談をお受けしております。疑問点、御用のある方はお気軽にご連絡下さい。

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